2024/02/25

ことばの贈り物 アーカイブス 9

2018年「泉ヶ丘通信」に掲載した文章の続きである。

さて、このようにかなり寄り道をした僕ですから、それなりに生徒の皆さんや現在迷いを抱いている人たちに、人生の先輩として伝えたいメッセージもあります。

そんな中で本日は、「来世を待つべからず、往世は追うべからず」という荘子の言葉をご紹介します。現実から目を背けて、未来を当てにしてはいけない。また現実の苦悩から逃れるため、過去の想い出に浸っていてはいけない。今を生きよ。そんなメッセージだと理解しています。

輝く未来、夢というものは、眩いばかりに美しく、それを実現したい、そこに近づきたいというあこがれを人は抱きます。と同時に、それがうまくいかない現実との間に自己矛盾や自己否定という壁が横たわります。その矛盾や挫折感を、ある人は「課題」と呼び、ある人は「テーマ」と呼びます。

こういった「課題」や「テーマ」は、自己成長したいと願う者にだけ見えるものです。自己成長から目を背けた瞬間、人は他者と自分を比べたり、しくじりを他者のせいにしたりしながら、自分の損得勘定だけに心動かすことになります。その先に、自己成長や自己実現は達成されません。

自らが自らの理想に近づこうとするためには、今この瞬間を大切に、丁寧に生きるしかない。ひとつひとつの地道な積み重ねの先にしか「輝く未来」は訪れない。多くの失敗と挫折を経験してきたボクが実感している考え方です

「過去」の延長線上に「現在」が顔を出しているのです。「現在」の考え方や態度は「過去」の自分から繋がっているのです。そして、その「現在」の延長線上にしか「未来」は訪れません。わたしたちは「過去」を変えることは出来ませんが、「未来」を変えることは出来るとよく言われます。しかしながら、実際「未来」を変えようとするには「現在」を変えることでしか「未来」を変えることは出来ないのです。

誰の胸にも「今」の自分をどう改めるのかという「課題」が突き付けられています。「今」を改めることは、重力に逆らう動きとなるため「痛み」を感じますし、これまでの自らの人生の「自己否定」にも繋がりかねません。

今この瞬間をしっかり「課題」に向き合って生き切れば、きっとその先に何かが見えてくる。今まで見たこともないような景色がそこには広がってくるに違いない。そう信じて、小さな成功体験を積み重ねていく中で、大きな「未来」が花開くことに期待しましょう。

毎日「課題」と向き合うことは辛いことです。でも「課題」と向き合っているのは、あなたひとりではありません。重力に逆らって生きている人は、あなたの周りにもたくさんいます。そんな仲間と共に、価値を共有する中から、心が通い合う喜びや楽しみを見つけたいものです。

共に努力している仲間がいるからこそ頑張れる。そういった心の友と一緒に「今」を生きる。本校は、そういった出会いに満ちた学校です。真の友と高め合うために、あなた自身が今日一日を精一杯生きることを忘れずに。

最後までお付き合いくださいまして、ありがとうございました。(2018・07・19)