2021/06/23

ことばの贈り物 2021/06/23

先日、学校からの帰り。18時過ぎの泉北高速線で天下茶屋に向かう準急行。あいにく座席には座れず、ドア付近に立っておもむろに本を読んでいた。電車の揺れに任せて活字を追う。ふと、人の気配がした。そちらに目をやると、いつやって来たのか、本校の制服を着た5人組が、笑顔で私を見つめている。
 
視線があったとたん、ひとりの男子中学生が「校長先生は、どちらまで帰るのですか?」という質問。本を閉じて、ここは子どもたちと話すことに決めた。
 
「ボクは、この電車で天下茶屋まで行くけど、みんなは?」
「へえ、遠いんですね。ボクたちは三国丘で降ります。」
「そうかあ、じゃあそこからまたJRに乗り換えるんやね?」
「はい、そうです。〇〇まで行きます」といった、たわいのない会話が続く。男子3名と女子2名のとても仲のよさそうな5人組。きっといつも一緒に帰っているんだろう。校長は早速、市場調査?に入る。
 
「えっと、みんなは中学1年生かな?」「担任の先生は?」「そっかあ、学校は楽しい?」「『群読』の授業はどう?」「タブレットは、使えてる?」などなど、校長が知りたい内容を矢継ぎ早に質問。それに的確に応えてくれる生徒たち。
 
しかし、敵?もさるもの。私の市場調査につき合うばかりではない。早速彼らの反撃開始!校長のことは既に調査済みと言わんばかりに、私の泉ヶ丘校長就任以前のキャリアについて、ひとつひとつ確かめてくる。舌鋒鋭い質問が続く。
 
彼らの事前調査の的確さに驚きと戸惑いを感じながら、「その通りですよ。」と応える。すでに丸裸にされている私への尋問は、その後も容赦なく続く。少し混雑気味の車内で、声を潜めながら話したつもりだけれど、きっと周囲には全部聞こえていたに違いない。
 
電車が三国丘駅に着くと、事実確認を終えた5人組は、安堵感を浮かべて去っていった。ひとりドア付近に佇んだまま、私は笑顔の余韻に浸っていた。こうして、車内で私を見つけて、会話してくれたこと。日ごろの疑問をぶつけてみて、安心したこと。そのうえで、私へのリスペクトを示してくれたこと。
 
西空に沈む夕陽を眺めながら、言い知れぬ高揚感に包まれている自分がいた。