2022/08/31

旧友Mとの想い出 4

8月最終日。そして、夏のレポート最終回。お付き合い願いたい。
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どうしてあの時、私は自分の事ばかり考えていたんだろう。病を押して、まして泊って行けと言ったMの胸中。ホントは支えてほしかったのは、Mの方だったのではないか。だけど、病を押して盃を交わしながら、自分のことには一言も触れず。終始私の話に同調してくれていた。私どころではない、重荷を背負いながら生きていたんだ……。

あれから、何年がたつのだろう。20年?いやもう少しかな?今でもご家族から毎年冬の便りが届けられる。灘の酒とはいかないので、ささやかなお菓子を返礼している。そして、この夏の菅平高原追想登山。ご家族には内緒で、ひとり登った。

20歳の頃に登った記憶はところどころ蘇る。将来のこと、恋愛のこと、家族のことを語りながら、過ごしたように思う。

60歳を超える今回の山登りは、体力的には全然違っていた。軽く登れていた巡回ルートも、根子岳往復で精いっぱい。でもそれなりに、昔のMと時間を共有できた喜びと満足感に浸れた。「江口、年相応に生きろよ!」と、Mの声が聞こえてきそうだ。

長年生きていると、人にはどうしても忘れられない想い出の地の、ひとつやふたつあるというもの。信州上田市。ここは、自分にはどうしても忘れられない場所である。最期まで病と闘い続け、人知れず静かに去って行った旧友Mを追想する旅。この夏のささやかな私の出来事である。