2024/02/22

ことばの贈り物 アーカイブス 6

2018年度の学校案内の巻頭ご挨拶である。

人が生きていく上で、大学入試は重要である。自らの勉励刻苦の結果が、試験を通じた「偏差値」で測られる現実が厳然と横たわるのも事実。知識や知性といった「認知能力」が問われ、そのための体制をしっかり敷くことが学校の責務であることに異論はない。だが、それだけでいいのか?それだけが学校教育の果たす役割なのか?

世の中には、たくさんの人々が暮らしていて、みんな自らの幸せの実現のために生きている。わたしもあなたもお隣さんも、みんな究極は、自らの幸せをどう実現すべきか。ここに人生の最大かつ最終の目的があるのではないか。

年齢や経験を重ねるに従い、自らの幸せの実現が、実は他者との結びつきの中でしか実現されないのだということを知る。自らの幸せの実現は、家族であったり、仲間であったり、チームであったり、地域社会であったり、国家であったり、地球全体であったりといった、他者の幸せが前提となっていることに気付く。

人は、それぞれの学びを通じて、少しずつ自らの幸せに必要な対象範囲が拡大していく。自らの幸せの実現のためには、誰が幸せでなければならないのか、何がなされなければならないのか。この気付きこそが、本来の教育のなせる業ではないか。

泉ヶ丘校は、大学入試の価値を否定しない。「偏差値」も重要であると考える。しかし、大学入試だけが唯一無二の価値であるというスタンスをとらない。子どもたちの価値の創出に少しでも寄り添える教育集団としてあるために、一つひとつの教育プログラムにこだわり続ける集団でありたいと考える。
(2018・07・10)