2023/07/02

大阪私立高等学校の完全無償化に関して

お休みのひと時をいかがお過ごしだろうか。先日テレビを観ていると、ニュース番組で府内の私立高校無償化制度に対する意見交換が、知事と私学の先生方とでなされていた。私も私学の校長として、もちろんこの完全無償化に関わる問題点を認識している。
 
ひと言でいえば、「完全無償化」というのは、これまでの保護者の所得制限による区別を無くし、全員に無償化対象を広げるというもの。ここに「キャップ制」というこれまでのルールが、そのままのしかかり、私学の負担が増すということである。
 
「キャップ制」というのは、大阪府が私学の授業料無償化の方針を打ち出した際、58万円までは、授業料を税金で賄います。しかし、それ以上の授業料設定している学校は、自己負担して学校経営を行って下さいというもの。58万円以上の授業料は頂戴できない。
 
本校の高等学校の授業料は64万5600円(2000年度改訂)。以来授業料は据え置かれている。無償化制度導入後(2011年度以降)差額の6万5600円は私学負担。制度導入後、授業料設定を変更することは、認められていない。
 
その後キャップは、所得制限を設けたまま60万円となった。そして、今回は所得制限撤廃による完全無償化。その分、私学の負荷は再び増える。施設整備を賄わなければならない、優秀な教員を確保しなければならない、安価な価格での食堂経営、物価高に伴うインフラ費用の増大……。
 
特色ある私学教育という中で、私学は互いに切磋琢磨しながら運営してきた。子どもたちの教育環境を、さらにより良いものとするために、我々の努力が求められるのは当然である。しかしながら、経営努力だけでは賄いきれない現実もある。
 
本来、完全無償化制度は国家施策であるべきもの。異次元の子育て政策にも謳われて然るべきもの。大阪府が国に先んじて、範を示そうとしている意義も理解はしている。ただ、「授業料完全無償化」というスローガンが、私学の経営を圧迫し、教育の質が低下することとなれば、本末転倒である。
 
教育の世界も、「痛みに耐えてほしい!」ということなのだろうか?