2024/03/17

2023年度 高校卒業式式辞をお送りします 2

私は、ここでどちらが正解だといった持論を展開するつもりはありません。申し上げたいことは、皆さんの人生が、選択の連続であるという中で、繰り返しますが、何が正解なのかは、分からない。正解はあなたの生き方、考え方の中から、自分で創り上げていくものなのです。

ではもうひとつ、別のお話しをしましょう。京都セラミックという会社を創設した稲盛和夫という経営者がいます。氏は物事に取り組む中で、「才能」や「情熱」といったことは、最低限の必要条件である。しかしながら、最も重要なことは、その人の「考え方」であるとおっしゃっています。「考え方」とは、「何のために」活動をしているのかという「動機」と言い換えてもいいかもしれません。行動に至る「動機」、「理由」、それを正しく持つということが「考え方」という意味です。

では「正しい動機」とは何なのでしょう。それはひと言でいえば「自分事で終わらせない」ということです。決して、自分の利益のためだけではなく、自らの行いに対する、他者との共有、感謝、分かち合い、認め合える関係。「自分事」で、他者を排除するような行動は慎むべきだとおっしゃっています。多くの人が同意し、協力してくれるような行動に繋がる考え方。全体が幸せになるような行動原理。それが正しい「考え方」だという意味です。

もちろん、資本主義社会ですから、厳しい競争社会で勝ち抜くことが求められます。ボヤボヤしていたら他者に出し抜かれるかもしれません。でもね、私も人生をここまで歩いてきて分かったのですが、多くの人が同意してくれるような生き方、考え方、それに繋がる仲間たち。それこそが、最も大切だし、それが真の「豊かさ」だということが、ようやくこの年齢になって、分かってきたのです。

皆さん。人生は選択の連続で、決して選んだ道が正解かどうかなんて分かりません。正解は、自分の行いで創り上げていくものなのです。そして「正解」に導かれる正しい考え方や行動というのは、多くの人が、あなたの言動を理解し、賞賛し、そこに同志が集うものなのです。決して独りよがりな「自分事」に終始するような行動に、人は集まって来ません。皆さん、正しい考え方を身に付けましょう。

何か偉そうに聞こえたかもしれませんが、私もまだ「朝(あした)に道聞かば、夕べに死すとも可なり」という境地には、至っていません。私もまだまだ修行の身であるということを、最後に付け加えておきます。

最後に。長い人生では、躓いたり、道に迷ったり、前に進めなかったり、いろんなことがあるでしょうが、どうか本校で学んだということを誇りに思って下さい。そして、いつでも気軽に立ち寄ってください。私たちは、皆さんが戻って来てくれることを、いつも心待ちにしております。皆さんの未来が素晴らしいものであることをご祈念申し上げます。ご清聴に感謝です。本日は、ご卒業、誠におめでとうございました。

さようなら。