2021/03/12

ことばの贈り物 2021/03/12

昨日ご報告した劇団四季の「リトルマーメイド」。ディズニーの原作を知らないので、劇団四季の作品を通してのみの感想である。ご一読願いたい。

ひとことで言えば、勧善懲悪をベースとしたサクセスストーリー。その中で、とにかく舞台が洗練されていて、音響、照明、衣装、装置といったあらゆるものが美しい。役者の歌やダンスも、観客を巻き込んでのパフォーマンスは圧巻。主人公の人魚であるアリエルが人間の世界にあこがれを持ちながらも、それが許されない厳しい現実。

人魚として王国を継承することが父親から期待されている。何とか自分の意志や夢を貫こうとしたアリエルが発した決意。「自分の居場所は、自分で決めるものなのよ」。これは我々にも通じる言葉である。自分の将来は、誰かに決められるものではなく、自分の意志で決めるものなのである。アリエルの言葉は重い。

その後、彼女は幾多の苦難を乗り越え、ついにあこがれの人間の世界での生活を実現したが、その代償として自分の声を失った。自分の気持ちや意思を相手に伝えるすべを失った彼女は絶望の淵にあった。その時、傍にいた宮廷音楽家のセバスチャンがこう言った。「幸せになるためには、叶わぬ夢など見ないことだ」と。

この諦念の言葉に、彼女の絶望を私たちは見ることが出来た。が同時に彼女は、そこから更なる困難を乗り越え、最後は人間の世界で生きることを、周りの全ての人たちからの祝福の中で実現できた。まさに「幸せになるためには、叶わぬ夢を追い続けなければならないのだ」。彼女はそう言いたかったのかもしれない。

素晴らしい作品であった。それを中学3年生の生徒たちと共有出来たことが何よりも嬉しい。間もなく彼らは次のステージへと旅立つ。このミュージカルが旅立つ彼らへの、はなむけの言葉となったに違いない。